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うっかり出戻りのテニプリblog。 立海→82と真幸。 ルド→赤観。 呟きとSS、ひょっこり絵。 基本は、マンガとゲーム。
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夏の夕暮れに浮かぶ白く透ける様な月は、時が過ぎると共に本来の月色になる。

「あっぢぃ……」

与えられたメニューを暑さで体力が何時も以上に削られていく中、切原は三強を叩きのめす為の『布石』だと耐え、こなしていた。
練習終了の合図が出る頃には、既に余力も残っていなかったか、コートに寝そべってしまっていた。
暑い暑いと言う癖に、陽の光を十分に吸収して熱を持っている場所から動こうとしない切原だった。

「ねぇ、柳?」

「どうした、幸村」

「早く移動させないと、干からびちゃうよ……あれ」

「何故、お……」

「俺に言う、って言うと思うんだけど、あれの相手出来るの……柳たげなんだもん」

俺達では手に余ると幸村は付け加え、口の端を少し持ち上げて、人の悪い笑みをしてみせる。そして、手を振り柳の答えなど聞かぬと背を向け、コートから去って行った。
三々五々と散っていく部員達の中、未だコートと戯れている切原と、ベンチに腰掛けデータの整理を続けている柳だけが取り残されていた。

 


暫くして。
ぱたん、と書き込みの済んだデータノートを閉じて柳は、やれやれと言う表情をする。
陽は傾き、白くあった月は、徐々にと本来の色を取り戻していた。
薄く色付く上弦の月が、薄藍色の雲一つ無い空、天高く浮かんでいる。

「いい加減、体力も戻っただろう……帰るぞ」

「まだ……無理ッス」

ともすれば寝てしまいそうだと危惧した柳は、足先で軽く切原の背を突く。
練習が終わった頃には荒れた息であったが、あれからどれ位の時間が経ったか……月を見れば判り、切原の呼吸も落ち着き払ったものになっていた。
しかし、無理だと言う。

「では、そのまま気が済むまで寝ていると良い。俺は……ん?」

「柳先輩、待っていてくれたんでしょう……最後まで面倒見て下さいッスよ……」

あなた達の作ったメニューで、体力が底を着いたのだから────と。
切原は、寝転んだままの格好で目を柔らかく細めると笑み、柳へと手を差し出した。
差し出されたものを掴んだ柳は、軽々とその身体を引き上げ、両腕の中へと納めてしまうのだった。

 

空に浮かぶ月は、もうすっかりと色を変えていた……

 


夕月 20110710

 


久々に~テニスのSS更新です。
たまたま今日、夕方に買い物へ、近所のスーパーへ行く道すがらに見た上弦の月。
あの夕方に白く浮かぶ月を見、時間の流れで色が付いて行く様を・・・想像し、これを書きました。
何か、甘える赤也が書きたくなって・・・つい。
別人でスミマセン。涙。
でも、強気発言を入れているので赤也っぽいと言えば、そうなのかなぁ・・・と、しておきます。さらに涙。
その発言により、逆っぽく見えるんですけど、柳赤と言い張っておきます。


短文ではございますが、お付き合いの程、ありがとうございました!!

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赤点を取るな、と口を酸っぱくして言われていた筈なのに、切原赤也は見事にやってのけた。
こそこそと隠していた真っ赤に染まった答案用紙を、目ざとく見付けた仁王雅治は、立海テニス部を束ねる幸村精市に手渡す。すると、幸村の隣に控える真田弦一郎が、切原に向かって一言、

「たるんどるっ!!」

雄叫びを上げると同時に、鉄の拳も振り上がっていた。
見事に直撃を食らわされた切原は、痛む頭を抱えて床へ倒れ込む。

「あーあ。これで赤也の頭ん中、さらに悪ぅなったのぉ」

「っつーか、何で仁王先輩が答案用紙、持ってたんっスか?!」


「お? 気になるんじゃ??」

床に埋めていた顔を持ち上げ切原は、しゃがみ込み自分の顔をニヤニヤと見ている仁王に頷いた。
普段、見ること無いしおらしいその姿に、癖の強い黒髪を撫でてやり更に深く笑む。
そして……

「企業秘密ナリよ」

誰がタダで教えるかと仁王は、切原に止めを刺し意気揚々と部室を出て行った。
「とりあえず……追試でも赤点取ったら五感奪っちゃうから、頑張って達人の授業受ける様にね」

仁王の止めに上乗せを喰らい撃沈させられた切原は、床に張り付いたまま、起き上がりもせず泣き言を零すのだった。




***



「だから、お前は詰めが甘いんだ」

切原と、幸村に『達人』と呼ばれた男・柳は、二人きりで部室に居た。
立海を束ねる長に言われては断る事も許されず、出来の悪い後輩の勉強指南に精を出す。
部活で扱かれ、仁王と真田に叩きのめされ、幸村に引導を渡された切原は、柳にも冷たくあしらわれる。
好きな人にまで仕打ちをされて、泣きたい気分で胸の中がいっぱいになって行く。

「どうした? 手が止まっているぞ」

机に広がった問題集を、ペンの止まっているヶ所を突いた柳の指先に、ポタリと水滴が落ちてきた。
何事かと顔を上げてみれば、切原が悔しそうに唇を噛み締めて涙を流していた。
泣き顔を見られてしまいバツの悪くなった切原は、制服の袖で涙を拭い、理由を話すことも無く、黙々と問題集を解き始める。

「赤也……赤也」

「……何っスか?!」

名を呼ばれ、拗ねたように返事を返してから顔を上げると、目の前に柳の指があった。
薄く唇を開き、驚いて顔を引いた切原の口元へ、その指は迫って来る。

「な……っ!!」

「ほら、これでも食べて機嫌を直せ」

柳の指は小さなチョコレートを摘んでいて、それを切原の咥内へとそっ、と差し込んだ。
そして、そのチョコレートを追い掛けて、柳の唇も切原の口元へ迫って来るのだった。





Valentine Kiss
20110209






前半ギャグですみません!!
でも書いてて楽しかったです(笑)



こんな柳赤ですが…バレンタインデーに寄せて♪

少しでも楽しんで頂けたなら幸です…お付き合いの程、ありがとうございました!!





緑輝くコートの中で、殺気立つ二年生の姿が在る。
切原赤也。
パーマではない、緩やかなウェーブのかかる黒髪から、汗をしたり落として相手に歯向かっていた。
彼の相手をするのは三年生、柳生比呂士。
眼鏡で隠れてしまっている瞳の所為か、周りの人から一歩引いた態度を取られがちだが、常に紳士な態度で相手に接する。
その柳生が、切原に対して……

「……このワカメ野郎がっ!!」

コート中に響く大きな声を上げ、切原が悪魔化してしまう言葉を放ったのだ。
ゆらり、と立ち上がる焔の様に髪を揺らし、全身を紅潮させる。片手で握り潰されたテニスボールを柳生へ翳し、金切り声で笑い立てた。

「後悔しやがれっ!!」

対側に居る柳生は冷静に、眼鏡を指先で支えながら口の端に笑みを浮かばせる。切原のサーブを真っ向から受けると、ラケットの先を向け宣言した。
その柳生の態度に、神経を更に逆なでされた切原は、『やれるものなら、やってみろ』と怒声を上げ、渾身のサーブを放った。






「切原君!! そこに居るのは仁王君ですよ!!」

――――私では、ありませんっ!!
柳生にイリュージョンし、辺り構わず悪戯をしていた仁王を、本物の柳生は追いかけ回していた。
早く捕まえて止めさせなければならないと、必死で後を追っていたのだが、すばしっこい仁王に巻かれ姿を見失っていたのだ。
冷や汗を流しながら色々な場所を見て回っていれ時、テニスコートのある方から切原の絶叫が聞こえてきた。
まさか?!
そう思った刹那、駆け出した柳生は、辿り着いたテニスコートで……自分が悪魔化した切原と対峙していた。
仁王が、切原を……
普段、絶対に言わないであろう柳生の口から(中身は仁王なので平気で言う)、その言葉を聞いた切原は案の定、何時も以上に暴走していた。





「プリッ……なーんじゃ、もう来たんか柳生?」

――――つまらんぜよ。
切原の打ったボールが、凄いスピードで飛んで来ているにもかかわらず、柳生にイリュージョンしていた仁王は、軽口を叩くと共に眼鏡を外して髪を振り乱した。すると、特徴のある銀色した仁王の本来の髪色が現れた。

「はあっ?!」

相手を完全に沈めた、と自負出来るものを、相手コートへ打ち込み意気揚々としていた切原は、柳生から仁王へ変わったのを見て驚き、だらし無く口が開いたままになってしまっていた。
「見抜けんかったお前(まん)が、悪いんじゃ」

飛んで来たボールを軽くいなした仁王の打球は、

「あだっ!!!」

見事、口を開けっ放しにして呆然としていた切原の、額の辺りに強打した。そして、まともに食らってしまい、そのままコートへ倒れ込んだのだった。




***




「見抜けなかった赤也も悪いが……」

「柳君っ!! 全面的に仁王君が、いけないのです!」

「いだだだだっ!! 痛いぜよ、柳生っ!!」

「当たり前です。これは、お仕置きなんですから」

ひと纏めにして結わわれている銀糸の髪を引っ張った柳生は、ついでに減らず口ばかり叩く口元も摘み上げた。
痛さを二倍、柳生から頂戴している仁王は、ここが保健室だと言うことをすっかり忘れ叫び倒した。

「二人とも煩い、出て行けっ!!」

――――明日のメニューで思う存分、仕置きをしてやる。
ぎゃあぎゃあ、と騒いでいる仁王と、その仁王に両手で頬と胸元を押し返され唸っている柳生は、柳の逆鱗触れた。
開眼し、その鋭い眼光で睨み据えられた喧しい二人は、あまりの恐さに震え上がり咄嗟に身体を寄せ合う。ここは保健室、ベッドには切原が眠り続けている。
騒ぎ立てた方が悪いと柳は、仁王と柳生の首根っこを掴んで室外へと放り出す。ばたん、と閉まる扉の音と共に、鍵の掛かる金属音が混じる。

「……明日の部活が怖いぜよ」

「大丈夫ですよ。怒るどころか……寧ろ明日は上機嫌でしょう」

「?」

完全に二人を拒絶した保健室の前で、暫く立ち尽くし扉を見詰めていた。
仁王が自業自得を嘆いたが、柳生は口の端を少しだけ上げて微笑んでいた。
その意味深言葉を吐く眼鏡を掛けた紳士へ、銀髪の詐欺師は小首を傾げて見せる。

「明日が来れば判りますよ」

柳生は仁王の背を押しながら声を立て、中にいる二人の邪魔をしてはいけないと、この場から立ち退いたのだった。



***



コートで打ち返された己の打球を、まともに食らい伸びてしまった切原を、背負っていた仁王とその尻を叩く柳生は、保健室で柳と偶然、出くわす。
事の次第を聞き苦笑いをしていた柳だったが、二人が騒ぎ出したのきっかけに保健室から追い出した。
清々したと額に手をやり、ベッドに沈んだままの切原へ視線を注ぐ。
ユニフォーム姿のままに寝かされている彼の額、ちょうど真ん中辺りに打球を直撃した痕が残っていた。
しっかりとボールの線まで残している辺り、どれほどの勢いで打ち、また打ち返されたのか。
それが当たった瞬間を想像した柳は、込み上げてきた笑いを堪える為に、口元を手で覆い隠す。
柳の笑い声が聞こえたか、夢の最中にある筈の切原が、眉間に皺を寄せて小さな唸り声を上げた。

「許せ、赤也」

「……うぃ……っす……」
この声も届いたのか切原は、返事の様な声を発して柳の方へと寝返りを打つ。その寝顔は、先程のものとは異なり、緩んだ笑顔を浮かべているようだった。
窓から流れて来た風に、ベッドを仕切るカーテンがふわ、と揺れる。
それを掴んだ柳は、切原との二人だけの空間を作るように引き寄せた。
薄い布に浮かび上がる影は腰を折り、ベッドで眠る影に覆い被さるのだった。







「早く目を醒ませ――――赤也」

眠り姫の額に残る痕へ、王子様は目醒めの接吻を落とすのであった。





王子様のKiss
2011003






めっちゃくちゃ時間かかりましたが…
赤也、誕生日おめでとう小話でした!!


って赤也、気絶してるやんか!とのツッコミは勘弁してやってください(笑)
目覚めたら一番に、柳の顔が見れるんだから…ね♪



お手伝いしてくれた82も楽しく書けたし、素敵な(少し気障ですが)柳も書けたから…満足してます。



遅くなりましたが赤也、誕生日おめでとう♪
柳先輩へ思う存分、甘えてみて貰いたいです!!
がんばれ、赤也!!


駄文、お付き合いの程…ありがとうございました。










突然の雨に降られ、帰る事が出来なくなってしまった切原は、窓に打ち付けられる雨粒の流れ行く様を見、溜息を吐いた。
硝子に手を当て室内から空を見上げれば、銀灰色した雲の隙間を、金光色した閃光が轟音を伴い駆け抜けて行く。

「……う、うわっ!!」

触れていた硝子窓がその音に反応し、空中を勇ましく飛んでいた振動を切原の手に伝えた。
轟音と振動に驚き、声を上げて一歩、窓から後退るのだった。

「それ程、驚く音でも無いだろう?」

「そ……そうっスか?!先輩は、そこから聞いてるから平気なんっスよ」

「では、お前と同じ位置に立って……雷の音を聞くとしよう」

切原と共に、突然の雨に足止めを食らわされた柳は、雷の音如きに声を裏返している後輩の傍に立ち、雨空を見上げる。
先ほど溜息を吐いた切原同様に、酷い降り方をしている雨に向け、その態を取とる柳だった。

「も、もうすぐ来るっスよ!!」

「そこまで構えなくとも良いだろう?……まさか、怖いのか?」

「なっ、何、言ってんですか?!怖いわ……」

訳が無い――――
と、続く言葉は、無残にも切原の悲鳴によって掻き消される。
何処かへ落ちたのでは無かろうかと思う位に雷音が響き、凄まじい稲光が天を走った。
余りの激しさに、日頃強気でいる切原は震え上がり、傍にある柳の身体にしがみ付いてしまう。彼のワイシャツの胸元を必死で握り締め、頭を下げて目を強く瞑ると、雷の行き過ぎるのを堪え忍んでいた。
その様を、切原の頭上から見つめていた柳は驚くも、直ぐ様ふわ、と口元を緩めて笑みを浮かべる。
切原の握り締められている手を、恐怖で揺れている髪を、気持ちが穏やかになる様にと優しく撫でた。

「やはり怖いのだな。お前のデータを一つ、取らせて貰ったぞ」

「い……言い振らさないで下さいよ!!特に部長と副部長と……仁王先輩には!!」

幸村と真田が出てくるのは分かるが、そこで仁王の名が出てくるのが可笑しくて、言わないと約束しながら笑いを堪える柳だった。
自分に触れている指先が、笑いを堪えて小さく震えている事に気が付いた切原は、勢い良く顔を上げ頭上にある先輩の表情を睨み付ける。
からかわれている恥ずかしさと、そこまで笑わなくてもと言う怒りとで、顔を赤くして膨れっ面をして見せた。
そんな切原が可愛くて仕方ない柳は、更に笑みを深くすると、拗ねて膨らんでいる彼の頬をひと撫でした。

「俺からは言わなくても、赤也がこうして自らの弱い部分を、他の人間に曝さなければ良いだけだ。それに……」

――――こういう事は、俺だけにするんだぞ。

怖いからとて誰彼抱きつくんじゃない。
そう釘を差した柳は、頬を撫でていた指を、癖のある切原の髪へと差し込む。
別の意味で顔を赤くしている切原の、その頭を両腕で掻き抱き胸元へと引き寄せた。
自分だけに見せている表情を、誰彼に知られない様にと柳は、愛しい子を抱き締め隠してしまうのだった。





――――何時の間にか雨は止み、天には鮮やかな虹の架け橋が浮かび上がっていた。





虹色恋模様
20100604






誕生日おめでとう、柳!!
かんなりフライングした誕生日小話を上げてしまいましたが、少し浮かんだので仕事帰りにガリガリ作業(笑)←あんまり笑ってもられないけど……テニスの原稿、真っ白だから。ははっ。



またまた雨ネタですが、しかも赤也が誰?ですが……大目に見てやってください、誕生日祝いだから(汗)


書いていて思ったこと。
私、柳の事好きだけど、考えてる以上に好きなんだ……でした。
実感した、当社比ですが真田より格好よくなってる!!



そんな訳で、まだまだ未熟者な柳赤ですが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
誕生日祝いになってるか不安ですが…



とにもかくにも、誕生日おめでとう、柳!!









――――あ。

ふと目に映ったそれに、切原赤也は心を奪われると同時に、ポケットへ手を突っ込み何かを確認して頷く。
手の中へ収めた物を握りしめ、止めていた歩みを再開させた。



***



「……そっ、そうですか。失礼しますっ!!」

何の連絡も無しに来てしまった自分が悪いから、また出直します。
そう言い加えた切原は、突然訪れたある家を後にする。
もうすぐ戻るだろうから待って貰えればと、家の人に言われたが断り、慌ててそこから逃げ出した。

「ま、仕方ねぇか。明日、学校で聞かれるんだろうなぁ……」

連絡もせずに来たのが悪かった。いや、わざと連絡をしなかったのは自分だからと、手にした箱を眺めて切原は肩を落とす。
明日、学校へ行けばいの一番で来た理由を問われる筈だ。
あの人の性格から、適当な言い訳をして逃げる自信が無いなぁ、と癖の強い髪を弄りながら、あれこれと考える切原だった。






眉間に皺寄せて、明日の言い訳を悩みながら歩いていると、目の前から見知った人影が三つ現れた。

(――――げっ?!)

此処では出会いたくない二つと、出会いたかった一つの人影。
一つだけなら心置き無く話し掛けられただろうに、残り二つの所為で切原は、今すぐこの場から消えなければならない――――と、脱兎を試みる。
しかし……

「あれっ、赤也?どうしたの、こんな所で?!」

脱兎するよりも早く見つけられてしまい、声が掛かってしまった。
踵を帰して三つの人影に背を向けていた切原は、非常に嫌な状態だと額に手を当て、天を仰いだ。

「珍しい所で会うな」

「……ちぃっす!ちょっと知り合いがこの辺に居て~」

三つの人影に振り返り、見え透いた嘘だと分かる言葉を咄嗟に口走って、頭を掻きながら引き釣り笑いをして見せた。
切原に声を掛けてきたのは、テニス部部長の幸村と、同じく副部長の真田だった。
二人とも出で立ちが何時もの洋装とは違い、和装をしていた。
真田が着物を着ているのは幾度か見たことがあったが、幸村のその姿は初めてで切原は思わず見入ってしまう。
見過ぎだと突っ込まれてしまうも、何時もと違うものを見れば、自然と目はそういう行動を取ってしまう。惚けた眼差しをしていた切原の頬を幸村は、両手で挟んで目を覚まさせる。

「いっ!痛いっスよ、部長~!!」

「だから見過ぎだって言っただろう」

「っつか、三人揃って着物なんか着て……何かあるんっスか?」

「ああ。柳が茶を点てると言うので来たんだ」

どう見ても中学生に見えない、切原から言わせれば『オッサンくさい』風体の真田が口を挟み、出会いたかった一つ影へ首を振り、話を振った。

「たまには、こう言うものも良いかと思ってな。赤也も一緒にどうだ?」

「いやっ、オレは……作法とか知らないし……」

「公の場では無いからな、作法も特に気にしなくて良いぞ」

一緒にどうだ? と、これから真田と幸村に茶を持て成そうとしている柳もまた和装をし、高い目線を切原に合わせて問うて来る。
柔らかく微笑み、癖のある髪を撫でて答えを促す。
幸村がしている和装を見つめていた感情とは別の想いを持って切原は、柳の姿と表情を見つめて赤面した。
「どうだ?」

「……あっ、すみませんっ!!オレ、帰んなきゃならないんで……失礼しますっ!!」

惚けている切原の顔を覗き込む柳は、鼻先が擦れてしまう位に顔を近付けて来る。
驚いて一歩後退り、この三人の仲には入れないと、早口でまくし立てて帰ろうとする。その間際、手にしていた箱を柳へ押し付けた。
「これ、貰いもんっスけど……食べて下さい!!」

本当は、柳に食べて貰いたくて買った物なのに、素直に言う事が出来ない切原は、嘘を吐いて箱を渡して脱兎した。
引き止める声よりも早く逃げ出した後輩の、行く手を阻んだのは『オッサンくさい』と揶揄られている副部長だった。

「ちょっ、副部長!降ろして下さい~っ!!」

「黙っていろ、赤也」

「四人でお茶会するの?楽しみ~」

逞しく切原を荷物抱えした真田の横に居る幸村は、後輩の参加に不敵な笑顔をしたが、直ぐに不貞腐れる羽目になる。

「帰るぞ、幸村」

「えー?!何でだよー!!」

「……ごほん。柳、これの世話を頼む」

「副部長っ!オレ、帰るって……」

「俺は、嘘は好かん。それだけだ……ほら幸村、帰るぞ」

「せっかく柳が、お茶とお菓子用意してくれてるのにー!!」

何故だ、何故だと拗ねている幸村に真田は、後から説明してやると言い包め、引き摺り元来た道を帰っていった。
幸村の口からは、度々聞かれる『真田のバカ!!』の叫び声が零れていた。







その背中を見送る柳と切原は、唖然として道の真ん中で立ち尽くす。

「一体、何なんっスかね……じゃ、オレも~うっ?!」

「お前は、俺の家に来て……茶の相手をして帰れ」

「先輩っ!!」

「副部長にも言われただろう?明日、言う事を聞いていなければ……鉄拳が飛ぶぞ」

「うわっ!何っスか、それ!!」

片手に切原が押し付けた箱を、片手で狼狽え赤面している切原の背中を支え押す柳は、一人と一つを自宅に連れ帰る。
何処か腑に落ちてない後輩の揺れている髪を見つめながら、心の中で長身の先輩は愚痴と礼を囁いていた。





(此処に赤也がいる理由に気付いた確率は……100%と言う所か。変に感が良い……が、今回は礼を言おう、真田)――――と。






手の中と箱の中と。
20100525








かなりのフライングですが、これから原稿バリバリしなきゃならないので(ホンマに大丈夫か?と言う予定の組み方)……すみません、先祝いをさせて頂きました!!




まだまだ赤也が全く持って「性格、出来てません!」な感じですが、スミマセン(^^;

ドキサバ柳のエンドを見て考えたお話でした。
あれ、凄まじいくらいに萌えるんですが…柳に!!
してもらいたいです、達人!!とかって画面見てキャーキャーしましたもん(笑)


そして、無駄に察しの良い真田が居ますが、彼、きっと幸ちゃんにはかなりの鈍感発揮すると思うんだけど、こと周りの事には意外と気付くのでは?な勝手な設定。
幸ちゃんの口癖も勝手な設定で…スミマセン(涙)




密やかに柳を想っている赤也が表現出来ていれば…と思います。
柳や周りにはバレバレだろうけど(苦笑)




かなりのフライングと、少し長文になりましたが、柳誕生日小話とさせて頂きます…

おめでとう、柳!!



駄文、お付き合いの程……ありがとうございました!
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