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うっかり出戻りのテニプリblog。 立海→82と真幸。 ルド→赤観。 呟きとSS、ひょっこり絵。 基本は、マンガとゲーム。
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貴方の言葉を、信じる事の出来ない私は、
淋しく、
愚かしい者です。





しとしとと降り落ちる雨は、柳生の制服へ染み込んで行く。
色が変わる程に濡れそぼる彼の手には、傘が握られているにも関わらず、それを使うことをせずにいた。
身体を雨に委ね、濡れるがまま歩いていた。



「あのアホぅは、何を考えとるんじゃ」

独特の髪色を持つ仁王は教室の窓から、同じく独特の髪色をする柳生が歩いているのを見付けた。
この季節の変わり目に、雨に濡れるなどもっての他。
体調を崩せば真田の鉄拳が飛んでくるのが目に見えてるであろうに、手元に見える傘もささずにいる柳生の動向に舌打ちをした。

「すまん、俺、帰るわ」

同じクラスの丸井に声を掛け、慌てた素振りをひた隠して仁王は、背中を向けて手を振り教室を出て行く。
舌打ちをもう一度し、少し動かす足の速度を早め、廊下に群れている人の間をすり抜ける。
はやる心を押さえる仁王の姿は、柳生に追い付かんとして人波に紛れて行くのであった。









紫の色した髪を掻き上げ、したり落ちる雨粒を払うも、後から後から叩き付けてくるそれは止まず、ますます柳生の身体を濡らす。
何故、手にした傘もささずに歩いているのか。
仁王の言葉を素直に飲み込む事の出来ない己に戒めを、そして、彼に詫びる思いで雨に打たれていたのだ。

「私と言う人間は、どうして……」

詐欺師と呼ばれていようとも、柳生だけに見せる『姿』も知っている癖に、どうしても疑心を持ってしまう。
彼の事が誰よりも好きでいるのに、その口から紡ぎ出される言葉を心に結び付けられない。

「情けないですね、全く」

「ほんまにのぉ……えぇ男が台無しじゃ。違うか……水も滴って、えぇ男の出来上がりか……」

柳生に向かい振り続いていた雨は、不意に無くなり、うっすらと影が落ちた。
驚きで目を丸くしているのは、眼鏡の所為で仁王には見えないが、口許をひきつらせて首を横に向ける。すれば、傘を手にしている癖に、銀の色した髪に雨粒を含ませている彼が立っていた。
傘をさしている癖に、何故濡れているのか不思議だった柳生は、横に向けた首を少し傾げる。

「何、可愛いことしとんのじゃ」

「はい?!」

仁王の言う『可愛い』が理解できずに柳生は、また首を傾げた。
その仕草にあほぅ、とぼやいた仁王は、冷えてしまった両手で、同じく冷えてしまっている柳生の頬を挟み込む。

「悩みすぎじゃ、お前は……素直に受け取りんしゃい」

「にっ……」

煩く名前を呼ぼうとした柳生の唇に、唇を微かに触れさせた仁王は、赤らめた頬を見られたくなくて顔を下げる。そして、指先まで硬直してしまった柳生の手を取り、胸元へと宛がう。
しっとりと濡れた制服の上からでも、仁王の体温の高さは激しくて、脈打つ鼓動の早さも激しくあった。

「顔とか言葉は嘘つけても、ここは嘘が付けんからの」

「そっ……そうですね」

「俺も、お前の顔が見えんき……」

――――何時も不安なりよ。

仁王はそう告げると、手にしていた傘を柳生に持たせる。そのまま倒れかかると胸元へと顔を埋め、自分と同じくらい激しい柳生の鼓動の響きに満足する仁王だった。






傘の花の中、寄り添う二人に――――雨はまだ降り続く。







九月の雨

20121001






ご無沙汰~な小話。
ちょっぴり瞑想ぎみ。
題名とイメージは、同名の曲より。


詐欺師と、顔の見えない紳士。
信じたくとも、お互いのスタンスから遠くに感じてしまう。
紳士は言えずに自戒の念に、詐欺師は言葉にして優位にたつ。
そんな雰囲気が出てくれていれば良いなぁ、と思います。


いつまでたっても未熟な小話ですが、お付き合いのほど、ありがとうございました!



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