うっかり出戻りのテニプリblog。
立海→82と真幸。
ルド→赤観。
呟きとSS、ひょっこり絵。
基本は、マンガとゲーム。
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春の訪れを待ち侘びる弥生三月は、幸村の誕生日がある月だ。
まだ肌を冷たく刺す風に当たりながら傍らを歩く幸村へ、真田は視線を移した。少し長めの、緩やかに波打つ髪に風が戯れ、揺らめいている。それを押さえようと髪に手を添え、悪戯しないで欲しいと小さく笑っていた。
「ん?どうしたんだ、真田?」
「……いや、別に……」
見られている事に気付いたか幸村は、視線だけを真田へ移して問い掛ける。
唯、幸村を見ていたかっただけの真田は、問われても本心を答える訳には行かずに、濁して何時もの様に帽子を深く被り逃げた。
「狡いよ、逃げるなんて……また逃げるんだ、俺から」
言葉少な、特にこう言う感情を表す言葉には免疫の無い真田には、どう幸村に答えて良いのか判らずにいる。
しかし。
その反面、きちんと自分の声と言葉で、幸村を好きなのだと伝えたくてジレンマに陥っているのも確かな話だった。
「……すまん」
そして、最後は上手く言えずに謝って締めてしまう。
悪いとは、本当に思っている。
幸村に対する気持ちは、誰よりも深いと自負している。
なのに言えない自分に恥じる真田は、目深に被った帽子から顔を見せない様に、幸村から視線を外すのが常だった。
*
「……すまん」
「謝るなら、見るなよ」
「違うんだ、幸村」
「何?!」
真田は、目の前に在る愛しい者を、春風と共に優しく両腕で包み込んだ。
先程まで、冷たい風と真田の行動に凍てついていた幸村の、心も身体も熱く、熱い魂に抱かれるのだった。
「幸村を感じる此処が、そうさせた。お前の事を何よりも、誰よりも負けない位……好きだ」
そう言うと、目深にしていた帽子の鍔を引き上げ、驚いて目を見開いている幸村へ顔を見せた。
そして、片手で幸村の背に触れ、片手は自分の左胸に置いた真田は、真摯なる瞳で見詰める。
もう一度、好きだ――――と唱えると幸村は破顔し、一筋の涙を零した。
まだ冷たいはずの春待ち風は、仄かな桜色へと変わった。
春待ち風 / 20110304
フライング幸村誕生日祝いです☆
何時もなら逃げちゃう真田も、誕生日だから…ちゃんと言ってくれました!
『好きだ』とはなかなか言わない、普段は幸ちゃんからしか出てこない台詞を、真田に言わせる事で『どれだけ好きか』を現してみました。
HAPPY BIRTHDAY、幸ちゃん☆
誕生日アルバム発売も同時に祝して!!
ちょっと纏まり無いかな…な感じですが、お付き合いの程、ありがとうございました!!
酷く真面目な顔をして、全く似合わない冗談を彼は言った。
「俺は魔法が使える。何か、叶えて欲しい『願い』はないか?」
何処だか判らない場所で、俺と真田は向かい合っていた。
真っ白な世界に二人きり、同じ制服を着て視線を絡ませている。
俺の肩に手を置いて、少しばかり高かった目線を下げて来た真田に、ビックリして目を丸くしたまま言葉を失う。
無言になった呆れ顔の俺の瞳を見詰めて、本当に真面目な顔して真田は問い掛けて来た。
「冗談も程々にした方がいいよ、真田。笑えなくて困るんだけど……」
「冗談など俺は言わん」
「物凄い自信だね」
不思議な事を言う真田の顔を視界に入れるのも億劫になった俺は、要望を考える振りをしてふい、と視線を逸らす。
顎に手を宛てがい考えに耽る俺の姿を真田は、ただ静かに見詰めていた。
沈黙が流れる二人の間を、時が行き過ぎる。
長く考え込んでいたが、俺の中にある『願い』は、ただ一つ……だった。
こんな事、叶えられる筈も無いし、真田が魔法使いだとも、これっぽっちも思っていない。
だけど……
俺の願いは、俺の意志に逆らい、独りでに唇から零れ落ちた。
「真田が魔法を使えるなら……」
「だから、使えると言っているだろう」
「じゃあ、俺の病気を治してよ……」
――――このままじゃ怖くて、眠れないよ。
自らが抱える不安を零すとは、部長失格だな……
そう頭の片隅で思いながらも、愛しい真田の前では無意味な虚勢でしかなかった。
皆の前では言えない事も、真田になら言える。
真田なら、俺の荷物を支えてくれる。
根拠の無い身勝手さに、心の中だけで苦笑いをした俺は、出来ないだろう?と視線で物を言う。
質問の答えにふむ、と一つ声を出し、手を一つ叩いた真田。
すると、二人の足元から星の形をした、平たい板のような物が浮き出て来る。
「……な、何?!」
「しっかり捕まっていろ」
「わ、わかんないよ、真田っ!! こ、怖いっ!!」
「大丈夫だ、俺が後ろに居る。幸村は……唯、前だけを、前にある光りだけを見ていろ!!」
ふぉん、と機械的な音がしたかと思えば、急速にスピードが上がって行く星の乗り物。
風に吹き飛ばされそうになる俺は、星の先端にしっかりと捕まる。そして、風圧で浮き上がろうとする俺の身体は……真田が背中越しに抱き留めてくれていた。先程、彼が言ったように目の前には光の粒が広がり、集まり始めていた。
最初は小さな物だったが、徐々に大きくなっていく。その光は大きくなるに連れ、目を開けていられない程の輝きを放つ。
「しっかりと見ろ、幸村!! あの先に……お前の望むものがある!!」
そう言った魔法使いの真田は、俺の手を握ると力の限りで抱き締めた。
痛い、と思ったが、それ以上に真田の愛情が……背中から痛い程に、俺の身体へと流れ込んできた。
***
重く、重い瞼を緩やかな動きで開いて行く。
睫毛の先を揺らして、開かれた瞳に飛び込んで来たのは、何時もの白い天井と……
「真田は、本当に魔法使いだったんだ……」
俺の目醒めを待っていたのか、真田弦一郎の強くも優しい視線がそこには在った。
魔法使いの彼
20101010
こんな真幸、出来ましたけど~(笑)
やたらとメルヘンチックで失礼しました。
柳赤でもですが……目を開いた時、一番最初に愛しい人の姿を、その瞳に映せるのは幸せだろうなぁ…な所から書きました。
幸ちゃんの場合は、病気→入院→手術なんで、そのまま目を開かなければOutですよね。
真田が幸ちゃんの夢の中へ迎えに、そして今の世界に連れ戻してくれたら良いな~な思いです。
怖くて堪らないだろうけど、真田が居てくれるから大丈夫……そんな真田に依存する幸ちゃんでございました。
すみません、こんな真幸ですが…楽しんで頂ければ幸です。
お付き合いの程、ありがとうございました。
その手に、触れて欲しい。
その指に、触れて欲しい。
何時の日か。
僕の全てに……触れて下さい。
「……」
「……」
「……ごほん」
「……え?」
「先程から真剣な顔をして、何を見ているのだ?」
*
本来、その日の活動日誌を記入するのは部長の役目だが、その部長である幸村がなかなかと作業をせず、時間だけが悪戯に過ぎていた。
筆記具を持ったまま唸っている幸村に、業を煮やした副部長の真田は、彼からノートと筆記具を取り上げ作業を始める。
「ありがとう、真田!! それって面倒……」
「言うな、幸村。他の部員に示しが付かなくなる。柳にも強く言われるぞ」
視線は書き連ねて行く文字に落としたまま、真田は幸村を叱る。
そもそも、彼の仕事を肩代わりしている真田も、柳に見つかれば注意を受けるだろうに……
時間を無駄にするのなら、小言を言われた方が良い。
真田の至った結論だった。
*
ぱたん、と書き終えた日誌を閉じた真田はもう一度、幸村に同じ問い掛けをした。先程とは変わり、目の前に座る幸村の方へ視線を流して声を発した。
その刹那。
ぽんっ、と茹だった音を頭の先からさせた様な幸村は、顔を紅くして目には涙を浮かべていた。
「さっ……真田のバカっ!!」
「ばっ……馬鹿とはどういう事だっ!!」
「急に顔、上げるなっ!!」
ぼろぼろ、と涙を流して泣き出した幸村の、怒りの矛先がいまいち良く判らずにいる真田は、腕組みをして小首を傾げる。
カンに障る事をしたのだろうか?
暫し考えるも埒が明かず、先ずは幸村を泣き止まそうと事を起こす。
タオルを手に立ち上がり、彼の傍へ寄ると零している涙を、手にしたものに染み込ませて行く。
「落ち着け!一体、俺は何をしたんだ?意味が判らん??」
「……もっと……」
「ぬ?」
「もっと……触って……」
――――欲しいんだ、真田の手で。
瞳から溢れ返っている涙を押さえているタオルを取り払った幸村は、直接、真田の手に触れる。
その行動と言葉に、今度は真田の頭上からぼんっ、と音が鳴った。
幸村以上に顔を紅くして狼狽える彼へ、身体を添わせる。
そして。
飽く事無く、際限無く――――真田の手の感触を欲する幸村だった。
その手、その指、その心。
20100912
幸ちゃんは、真田の綺麗な文字を綴る指先を見、いろいろ深ーい所まで考えちゃって……
いたら、タイミング良いのか悪いのか、真田が顔上げちゃってバツが悪くて泣き出した……でした。
説明なかったらナニガナンダカですみませんな駄文でした。(T_T)
幸村は、自身の頭に載せられている花冠を取り、真田の黒髪へと捧げる。
彼の膝上に身体を預けたまま、彩られた面持ちをしてもう一度――――誕生日おめでとう、と耳元で囁いた。
「俺に載せても似合わんだろう。これは、幸村に飾ってこそ生きる物だ」
「そうかな?そんな事ないよ……真田は自分の事、下げて見過ぎだよ。凄く格好良くて、凄く綺麗だと思っている」
白い花々で織り上げられた冠を戴いた真田の額に、自らの額を優しくあわせた幸村は、言葉を織り上げて行く。
むず痒い、己に最も似合わない言葉を紡ぐ唇を、真田は自分のそれで塞ぎ声を奪ってしまう。
喉を鳴らして苦しいと訴えて来る幸村の手を、真白なリボンを絡めた指で封じ込めた。
塞いだ唇に悪戯をしていた真田は、幸村の身体から力が抜けたのを感じ、それを解放してやる。
頬と唇に紅色を差し可愛らしく睨む幸村の、目元にうっすらと浮かぶ雫に舌を寄せ掬い取れば、その身体は熱を高めて跳ね上がった。
「……も、っ……何だよ、急にっ!!」
「余計な事を喋るからだ、馬鹿者」
「でも、本当の事なんだから仕方ないだろう?本当に真田は、かっ……んっ!!」
恥ずかしがるのを知っている癖に、まだお喋りを続けようとする幸村の唇を真田は、再び『口吻』と言う悪戯で塞いでしまうのだった。
花の戴冠 おまけのおまけ
20100520
何やってんだか(笑)
『おまけ』で止めりゃ良かったのかも知れませんが、さらに引っ張った桜岡(汗)
幸ちゃんからKissさせても…させるつもりだったが、書いている内に余計な事を喋ってしまったので、真田のKissで仕置きをして頂きました(爆)
ま、これも誕生日だよね~と締め括っておきます。
……真幸で初めてこんなに濃いKiss書いた(←この辺りがヘタレの由縁。苦笑)
「すまん。お前まで俺の誕生日に巻き込んでしまって……」
真田は、手荒い扱いをされた幸村を膝上に置き、頭を下げて謝る。
口元を封されている所為で言葉を出せない幸村は、代わりに首を振り、真田は悪くないと訴えた。
「……っ、ふあっ!!覚えてろよ、倍返しにしてやる!!」
余程苦しかったのだろう、口に貼られていた物を剥がしてやると、思い切り息を吸い込み怒りを露にする。幸村の立腹を宥める事を敢えてせずに真田は、手足の自由を奪っている真白なリボンを解いてやった。
数分振りに自由を取り戻した手を握り込み、ボキボキと指を鳴らす幸村を見、明日は大変な事になりそうだと、この騒ぎの大元は心中で溜息を零した。
「俺の所為で迷惑を掛けた。幸村、許して欲しい」
膝上から長椅子へと彼の身体を移した真田は、その眼前に立ち深く頭を下げ再び謝罪する。
「……いもん……」
「ぬ?」
「真田は、悪くないんだってばっ!!」
俯いて聞き取れなかった言葉を問い質してみれば、彼は顔を勢い良く上げ、驚くぐらいに大きな声を立てた。
顔を真っ赤にして叫んだ幸村は、呆気に取られている真田の身体を長椅子へと沈める。そして、彼の膝上に自ら座り、花冠を戴いたまま首筋に腕を絡めて抱き付いた。
「人にされるんじゃなくて、俺から……」
――――こうやって、真田の誕生日……『おめでとう』ってしたかったんだ。
しっかりと腕を絡め、離れようとしない幸村へ真田は、その心が何よりも嬉しいと――――耳元で囁き、愛しい人の背を優しく抱き締めるのだった。
花の戴冠・おまけ
20100518
部室を二人きりにして、出ていった人々は…しっかり、ちゃっかり、この様を覗いていたのでした(笑)
そして、恐るべき立海テニス部・部長の逆襲が始まる……ぎゃっ!!
おまけ不要かも…と思いましたが、あのままもなぁ、な感じで付け加えてみました。滝汗。
ちゃんと幸ちゃんから『おめでとう』言ってなかったですし…ね!!
駄文、お付き合いのほど、ありがとうございました!!
×
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春の訪れを待ち侘びる弥生三月は、幸村の誕生日がある月だ。
まだ肌を冷たく刺す風に当たりながら傍らを歩く幸村へ、真田は視線を移した。少し長めの、緩やかに波打つ髪に風が戯れ、揺らめいている。それを押さえようと髪に手を添え、悪戯しないで欲しいと小さく笑っていた。
「ん?どうしたんだ、真田?」
「……いや、別に……」
見られている事に気付いたか幸村は、視線だけを真田へ移して問い掛ける。
唯、幸村を見ていたかっただけの真田は、問われても本心を答える訳には行かずに、濁して何時もの様に帽子を深く被り逃げた。
「狡いよ、逃げるなんて……また逃げるんだ、俺から」
言葉少な、特にこう言う感情を表す言葉には免疫の無い真田には、どう幸村に答えて良いのか判らずにいる。
しかし。
その反面、きちんと自分の声と言葉で、幸村を好きなのだと伝えたくてジレンマに陥っているのも確かな話だった。
「……すまん」
そして、最後は上手く言えずに謝って締めてしまう。
悪いとは、本当に思っている。
幸村に対する気持ちは、誰よりも深いと自負している。
なのに言えない自分に恥じる真田は、目深に被った帽子から顔を見せない様に、幸村から視線を外すのが常だった。
*
「……すまん」
「謝るなら、見るなよ」
「違うんだ、幸村」
「何?!」
真田は、目の前に在る愛しい者を、春風と共に優しく両腕で包み込んだ。
先程まで、冷たい風と真田の行動に凍てついていた幸村の、心も身体も熱く、熱い魂に抱かれるのだった。
「幸村を感じる此処が、そうさせた。お前の事を何よりも、誰よりも負けない位……好きだ」
そう言うと、目深にしていた帽子の鍔を引き上げ、驚いて目を見開いている幸村へ顔を見せた。
そして、片手で幸村の背に触れ、片手は自分の左胸に置いた真田は、真摯なる瞳で見詰める。
もう一度、好きだ――――と唱えると幸村は破顔し、一筋の涙を零した。
まだ冷たいはずの春待ち風は、仄かな桜色へと変わった。
春待ち風 / 20110304
フライング幸村誕生日祝いです☆
何時もなら逃げちゃう真田も、誕生日だから…ちゃんと言ってくれました!
『好きだ』とはなかなか言わない、普段は幸ちゃんからしか出てこない台詞を、真田に言わせる事で『どれだけ好きか』を現してみました。
HAPPY BIRTHDAY、幸ちゃん☆
誕生日アルバム発売も同時に祝して!!
ちょっと纏まり無いかな…な感じですが、お付き合いの程、ありがとうございました!!
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酷く真面目な顔をして、全く似合わない冗談を彼は言った。
「俺は魔法が使える。何か、叶えて欲しい『願い』はないか?」
何処だか判らない場所で、俺と真田は向かい合っていた。
真っ白な世界に二人きり、同じ制服を着て視線を絡ませている。
俺の肩に手を置いて、少しばかり高かった目線を下げて来た真田に、ビックリして目を丸くしたまま言葉を失う。
無言になった呆れ顔の俺の瞳を見詰めて、本当に真面目な顔して真田は問い掛けて来た。
「冗談も程々にした方がいいよ、真田。笑えなくて困るんだけど……」
「冗談など俺は言わん」
「物凄い自信だね」
不思議な事を言う真田の顔を視界に入れるのも億劫になった俺は、要望を考える振りをしてふい、と視線を逸らす。
顎に手を宛てがい考えに耽る俺の姿を真田は、ただ静かに見詰めていた。
沈黙が流れる二人の間を、時が行き過ぎる。
長く考え込んでいたが、俺の中にある『願い』は、ただ一つ……だった。
こんな事、叶えられる筈も無いし、真田が魔法使いだとも、これっぽっちも思っていない。
だけど……
俺の願いは、俺の意志に逆らい、独りでに唇から零れ落ちた。
「真田が魔法を使えるなら……」
「だから、使えると言っているだろう」
「じゃあ、俺の病気を治してよ……」
――――このままじゃ怖くて、眠れないよ。
自らが抱える不安を零すとは、部長失格だな……
そう頭の片隅で思いながらも、愛しい真田の前では無意味な虚勢でしかなかった。
皆の前では言えない事も、真田になら言える。
真田なら、俺の荷物を支えてくれる。
根拠の無い身勝手さに、心の中だけで苦笑いをした俺は、出来ないだろう?と視線で物を言う。
質問の答えにふむ、と一つ声を出し、手を一つ叩いた真田。
すると、二人の足元から星の形をした、平たい板のような物が浮き出て来る。
「……な、何?!」
「しっかり捕まっていろ」
「わ、わかんないよ、真田っ!! こ、怖いっ!!」
「大丈夫だ、俺が後ろに居る。幸村は……唯、前だけを、前にある光りだけを見ていろ!!」
ふぉん、と機械的な音がしたかと思えば、急速にスピードが上がって行く星の乗り物。
風に吹き飛ばされそうになる俺は、星の先端にしっかりと捕まる。そして、風圧で浮き上がろうとする俺の身体は……真田が背中越しに抱き留めてくれていた。先程、彼が言ったように目の前には光の粒が広がり、集まり始めていた。
最初は小さな物だったが、徐々に大きくなっていく。その光は大きくなるに連れ、目を開けていられない程の輝きを放つ。
「しっかりと見ろ、幸村!! あの先に……お前の望むものがある!!」
そう言った魔法使いの真田は、俺の手を握ると力の限りで抱き締めた。
痛い、と思ったが、それ以上に真田の愛情が……背中から痛い程に、俺の身体へと流れ込んできた。
***
重く、重い瞼を緩やかな動きで開いて行く。
睫毛の先を揺らして、開かれた瞳に飛び込んで来たのは、何時もの白い天井と……
「真田は、本当に魔法使いだったんだ……」
俺の目醒めを待っていたのか、真田弦一郎の強くも優しい視線がそこには在った。
魔法使いの彼
20101010
こんな真幸、出来ましたけど~(笑)
やたらとメルヘンチックで失礼しました。
柳赤でもですが……目を開いた時、一番最初に愛しい人の姿を、その瞳に映せるのは幸せだろうなぁ…な所から書きました。
幸ちゃんの場合は、病気→入院→手術なんで、そのまま目を開かなければOutですよね。
真田が幸ちゃんの夢の中へ迎えに、そして今の世界に連れ戻してくれたら良いな~な思いです。
怖くて堪らないだろうけど、真田が居てくれるから大丈夫……そんな真田に依存する幸ちゃんでございました。
すみません、こんな真幸ですが…楽しんで頂ければ幸です。
お付き合いの程、ありがとうございました。
その手に、触れて欲しい。
その指に、触れて欲しい。
何時の日か。
僕の全てに……触れて下さい。
「……」
「……」
「……ごほん」
「……え?」
「先程から真剣な顔をして、何を見ているのだ?」
*
本来、その日の活動日誌を記入するのは部長の役目だが、その部長である幸村がなかなかと作業をせず、時間だけが悪戯に過ぎていた。
筆記具を持ったまま唸っている幸村に、業を煮やした副部長の真田は、彼からノートと筆記具を取り上げ作業を始める。
「ありがとう、真田!! それって面倒……」
「言うな、幸村。他の部員に示しが付かなくなる。柳にも強く言われるぞ」
視線は書き連ねて行く文字に落としたまま、真田は幸村を叱る。
そもそも、彼の仕事を肩代わりしている真田も、柳に見つかれば注意を受けるだろうに……
時間を無駄にするのなら、小言を言われた方が良い。
真田の至った結論だった。
*
ぱたん、と書き終えた日誌を閉じた真田はもう一度、幸村に同じ問い掛けをした。先程とは変わり、目の前に座る幸村の方へ視線を流して声を発した。
その刹那。
ぽんっ、と茹だった音を頭の先からさせた様な幸村は、顔を紅くして目には涙を浮かべていた。
「さっ……真田のバカっ!!」
「ばっ……馬鹿とはどういう事だっ!!」
「急に顔、上げるなっ!!」
ぼろぼろ、と涙を流して泣き出した幸村の、怒りの矛先がいまいち良く判らずにいる真田は、腕組みをして小首を傾げる。
カンに障る事をしたのだろうか?
暫し考えるも埒が明かず、先ずは幸村を泣き止まそうと事を起こす。
タオルを手に立ち上がり、彼の傍へ寄ると零している涙を、手にしたものに染み込ませて行く。
「落ち着け!一体、俺は何をしたんだ?意味が判らん??」
「……もっと……」
「ぬ?」
「もっと……触って……」
――――欲しいんだ、真田の手で。
瞳から溢れ返っている涙を押さえているタオルを取り払った幸村は、直接、真田の手に触れる。
その行動と言葉に、今度は真田の頭上からぼんっ、と音が鳴った。
幸村以上に顔を紅くして狼狽える彼へ、身体を添わせる。
そして。
飽く事無く、際限無く――――真田の手の感触を欲する幸村だった。
その手、その指、その心。
20100912
幸ちゃんは、真田の綺麗な文字を綴る指先を見、いろいろ深ーい所まで考えちゃって……
いたら、タイミング良いのか悪いのか、真田が顔上げちゃってバツが悪くて泣き出した……でした。
説明なかったらナニガナンダカですみませんな駄文でした。(T_T)
幸村は、自身の頭に載せられている花冠を取り、真田の黒髪へと捧げる。
彼の膝上に身体を預けたまま、彩られた面持ちをしてもう一度――――誕生日おめでとう、と耳元で囁いた。
「俺に載せても似合わんだろう。これは、幸村に飾ってこそ生きる物だ」
「そうかな?そんな事ないよ……真田は自分の事、下げて見過ぎだよ。凄く格好良くて、凄く綺麗だと思っている」
白い花々で織り上げられた冠を戴いた真田の額に、自らの額を優しくあわせた幸村は、言葉を織り上げて行く。
むず痒い、己に最も似合わない言葉を紡ぐ唇を、真田は自分のそれで塞ぎ声を奪ってしまう。
喉を鳴らして苦しいと訴えて来る幸村の手を、真白なリボンを絡めた指で封じ込めた。
塞いだ唇に悪戯をしていた真田は、幸村の身体から力が抜けたのを感じ、それを解放してやる。
頬と唇に紅色を差し可愛らしく睨む幸村の、目元にうっすらと浮かぶ雫に舌を寄せ掬い取れば、その身体は熱を高めて跳ね上がった。
「……も、っ……何だよ、急にっ!!」
「余計な事を喋るからだ、馬鹿者」
「でも、本当の事なんだから仕方ないだろう?本当に真田は、かっ……んっ!!」
恥ずかしがるのを知っている癖に、まだお喋りを続けようとする幸村の唇を真田は、再び『口吻』と言う悪戯で塞いでしまうのだった。
花の戴冠 おまけのおまけ
20100520
何やってんだか(笑)
『おまけ』で止めりゃ良かったのかも知れませんが、さらに引っ張った桜岡(汗)
幸ちゃんからKissさせても…させるつもりだったが、書いている内に余計な事を喋ってしまったので、真田のKissで仕置きをして頂きました(爆)
ま、これも誕生日だよね~と締め括っておきます。
……真幸で初めてこんなに濃いKiss書いた(←この辺りがヘタレの由縁。苦笑)
「すまん。お前まで俺の誕生日に巻き込んでしまって……」
真田は、手荒い扱いをされた幸村を膝上に置き、頭を下げて謝る。
口元を封されている所為で言葉を出せない幸村は、代わりに首を振り、真田は悪くないと訴えた。
「……っ、ふあっ!!覚えてろよ、倍返しにしてやる!!」
余程苦しかったのだろう、口に貼られていた物を剥がしてやると、思い切り息を吸い込み怒りを露にする。幸村の立腹を宥める事を敢えてせずに真田は、手足の自由を奪っている真白なリボンを解いてやった。
数分振りに自由を取り戻した手を握り込み、ボキボキと指を鳴らす幸村を見、明日は大変な事になりそうだと、この騒ぎの大元は心中で溜息を零した。
「俺の所為で迷惑を掛けた。幸村、許して欲しい」
膝上から長椅子へと彼の身体を移した真田は、その眼前に立ち深く頭を下げ再び謝罪する。
「……いもん……」
「ぬ?」
「真田は、悪くないんだってばっ!!」
俯いて聞き取れなかった言葉を問い質してみれば、彼は顔を勢い良く上げ、驚くぐらいに大きな声を立てた。
顔を真っ赤にして叫んだ幸村は、呆気に取られている真田の身体を長椅子へと沈める。そして、彼の膝上に自ら座り、花冠を戴いたまま首筋に腕を絡めて抱き付いた。
「人にされるんじゃなくて、俺から……」
――――こうやって、真田の誕生日……『おめでとう』ってしたかったんだ。
しっかりと腕を絡め、離れようとしない幸村へ真田は、その心が何よりも嬉しいと――――耳元で囁き、愛しい人の背を優しく抱き締めるのだった。
花の戴冠・おまけ
20100518
部室を二人きりにして、出ていった人々は…しっかり、ちゃっかり、この様を覗いていたのでした(笑)
そして、恐るべき立海テニス部・部長の逆襲が始まる……ぎゃっ!!
おまけ不要かも…と思いましたが、あのままもなぁ、な感じで付け加えてみました。滝汗。
ちゃんと幸ちゃんから『おめでとう』言ってなかったですし…ね!!
駄文、お付き合いのほど、ありがとうございました!!